2021年8月26日木曜日

1992年カウアイ島~深津紘二朗

 パドルを操りながらカヤックをこぎ進めました。ハワイ諸島西北端に近いカウアイ島の、ここは北部のハナレイ川。時折ヤシの木々の合間から野鳥のさえずりが聞こえる以外は、静寂が包みます。


「ゆっくり。そう。上げたパドルを押すように」。先頭を行く案内役のミコ・ゴルディネスさんが、カヤック初挑戦の観光客にやさしく手ほどきしてくれます。


「この草でハワイの人たちは紙を作ったんだ」。川岸の自然の説明を聞きながらゆったりとした川の流れを上り、そして下ります。


岸では牛が草をはんでいます。遠く雲を頂いた峰の陰影が手に取るようです。川面で大きな魚がはねました。「ポシャリ」。波紋とともに余韻が広がりました。


夕方、島の南部のリゾート基地ポイプ海岸から、小さな双胴船でサンセット・クルーズに出掛けました。


真っ青な海面にウミガメが一頭、二頭、悠々と姿を見せました。奇岩に囲まれたキプカイ海岸では、アザラシの一種、ハワイアン・モンク・シールが一頭近づき、ひょうきんな表情を船上の客に投げかけました。今ではハワイ近海に200頭しかいないといいます。「あんたたちは運がいいよ」と、エバンス船長はご機嫌でした。


日没。真っ赤に燃える空にこたえ、山の頂があかね色に染まっていきます。


ハワイ諸島最大の島、ハワイ島。ここでも、今、環境保護と観光の接点を探る動きが見えます。西部海岸の広大な溶岩地形を切り開いたリゾートホテル「ハイアット・リージェンシー・ワイコロア」には、海水を引き込んだ人工ラグーン(池)があり、自然保護団体の指導でイルカと遊ぶことができます。体をすり寄せる人なつっこいイルカたち。頭をなでると、うれしそうに目を細めました。


そしてマウイ、モロカイ、ラナイ島。これら「ネイバーアイランド」と呼ばれるオアフ島以外のハワイの島々は、それぞれにエコロジー(環境保護)時代の旅の魅力を模索しているようです。


あまりにポピュラーなハワイですが、オアフ島から少し足を延ばせば、自然にあふれた新しい旅が待っています。



深津紘二朗

1992年カウアイ島~深津紘二朗

 パドルを操りながらカヤックをこぎ進めました。ハワイ諸島西北端に近いカウアイ島の、ここは北部のハナレイ川。時折ヤシの木々の合間から野鳥のさえずりが聞こえる以外は、静寂が包みます。 「ゆっくり。そう。上げたパドルを押すように」。先頭を行く案内役のミコ・ゴルディネスさんが、カヤック初...